<ECA法の特徴>
Electrochemical cellular automaton (ECA)は、直観的に理解でき、発散のトラブルもないので扱いやすい。定量性には欠けるので電気化学を理解するためのツールと考えるのがよい。 <セル構造> 1D-ECAでは、空間を幅hのセルに分割してP0k, P1k, P2k・・・とし、Δt刻みで時間発展(k=0,1,2,・・・)を追うというものである。P0は電極に面したセルである。 ここでは3成分とする。 (III)
いずれの場合も始状態は、XYとAYの組成が (n+,m+)の均一系である。セルの電荷密度は |
<セルダイナミックス>j=1,2,3,・・・のセルは次の遷移規則に従う。
(V)
ここでFはセルjにおける電場、μは電場係数である。拡散に対応する時間間隔で電荷の中和が進めばμ=1であるが、実際ははるかに速いから式(III)で見積もられる電場は過大評価になる。
μの値は系全体のダイナミックスが破綻しないように試行錯誤して決める。なおμ=0では電場の効果は取り込まれない
j=0のセルについては反応確率 rfを含む式になる。
<アルゴリズム> |
<静電場の境界条件>
電極の間に中性領域を置き、その中にφ=0 の点がある(黄色 1mm)。図のピンク領域(2μm)でECAを適用する。 <選んだパラメータ値と初期状態> 初期濃度を(n+,m+,n-)=(5.5,4.5,10), μ=0.003, rf=0.1 として計算した。 μを大きくするとイオンの濃度分布に不自然なうねりが生じる。最初は均一系なのでF一定、φは直線の状態から出発する。 <電気二重層の形成> 電位が不適当で電流が流れない場合をまず取り扱った。電場の遮蔽がゆっくりと進行し、93サイクルで右の電位分布になったが、サイクルを続けると電位はそのまま変化し続けた。 安定状態の実現が今後の課題である。 <カチオンメッキとアニオンメッキ> どちらの場合も濃度Xは減少するが、カチオンではY-が増えた。これは理解しがたいが、原点近傍における遷移アルゴリズムの不完全さに由来すると考えられる。 アニオンではY+も同様に濃度が下がっているので直観とあう。Faraday電流については、 カチオンメッキ iC > 電場なしの電流 iD >アニオンメッキ iA という結果が得られた。iA 〜 0.5 iC である。 |
<静電場の境界条件>
<電気二重層の計算結果> <メッキの計算結果>
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<結論> 電場の中に置かれたECAセルのモデルとアルゴリズムを考案した。アニオンメッキとカチオンメッキに適用して違いが見えた。 幅広い電気化学過程が半定量的に扱えそうであるが、不完全な点がまだ残っている。 参考文献: (1) 林 茂雄「エンジニアのための電気化学」(コロナ社、2012). (2) S.Hayashi, Electrochem. 81, 16-18 (2013). |