食塩水の電気抵抗にこだわった話
<水道水の抵抗測定>
モノの電気抵抗を測定するにはテスターを抵抗測定モードにしてからプローブをモノにあてがう。これは学生実験の常識でしょう。 精度を上げるには、あらかじめプローブをショートして0Ωとなるようにつまみを調整しておきます。 図ではアナログ・テスターを用いて水道水の抵抗を測っています。一番端からわずかに針が動きました。数MΩの抵抗をもっているといえます。導体か絶縁体かと聞かれれば一応絶縁体でしょう。 |
<テスターによる抵抗測定>
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<食塩水の抵抗測定:1 mol/L>
次に食塩3gを水51gに溶かして1 mol/L の試料を作りました。右図は直径5mmのグラファイト棒を中心間距離dで浸した時の抵抗値です。 下の点と上の点はそれぞれ浸漬直後の値と定常値です。測定誤差がかなりありますが、特徴は捉えられていると思います。 イオン独立移動の法則によって比伝導度を求め、次の公式(Rの式は、霜田・近角、大学演習 電磁気学 p.84)で抵抗を計算するとdの小さい順に R=0.57, 1.2, 1.7Ωです。 |
<1 mol/L 食塩水の抵抗>
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<食塩水の抵抗測定:0.001 mol/L>
上記の食塩水を1000倍に希釈して0.001 mol/L の試料を作りました。グラファイト電極を試料に浸漬した直後の値と定常値をプロットしたら右図になりました。やはり測定誤差はかなりあります。 抵抗を計算すると単純に1000倍となって、dの小さい順に R=570, 1200, 1700Ωです。kΩのオーダーに入りましたが、やはり1:2:3 のd依存性が見られません。 |
<0.001 mol/L 食塩水の抵抗>
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<抵抗はプローブ間の距離によらない>
二つの実験から、抵抗Rは電極間距離dに対して顕著な依存性をもたない、ましてや電磁気学がいうような1:2:3の依存性はないことが分かりました。ところで依存しないことを確認するだけなら、一方の電極を固定してもう一方の電極をゆっくり移動させれば十分のはずです。 そのような実験をしたところ予想通り抵抗値に目立った変化は見られませんでした。よって抵抗 R はプローブ間隔 d によらないといえます。 |
<テスターによる抵抗測定の意味>
では上記公式で予想される R の d 依存性は何故表れないのかという疑問が残ります。 そこで抵抗を測定しているときのプローブ間電圧をチェックしたところ、二つのテスターで V=1.3V と 1.4Vでした。テスターで直接表示されるのは電流 I ですが、目盛りはR=V/I です。 |