Infrared spectra of simple molecules Mathematica/Wolfram に戻る
<空気が吸収する光>
CO2が増えたために地球が温暖化したといっていますが、では透明な空気が本当に太陽エネルギーを吸収するのか調べてみます。 図は、空気を透過した赤外線と途中で空気を抜いた経路を通った赤外線の強度差をグラフ化したものです。横軸は 1cmあたりの波数で波長に反比例します。これをスペクトルといいます。図は特に透過スペクトルといい、下に延びたところでは赤外線が通らない、つまり分子が赤外線を吸収しています(筆者手持ちの古い測定データなので横軸が非線形です)。 |
<空気の赤外スペクトル>
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<分子の固有振動>
図に記入した変角や伸縮は分子の振動モードつまり固有振動の型を表わす言葉です。身近な固有振動といえば楽器でしょう。その固有振動は(およそ10 kHz以下なら)すべて耳に聞こえます。しかし、分子の世界には目に見えない(赤外線を吸収しない)固有振動があります。 図を見ると空気の主成分である N2と O2 がありません(Arは元々振動できません)。その理由は電磁気学で理解できます。 一般に分子は温度に応じていろいろな振動をしていますが、その際双極子モーメントが振動すれば同じ振動数の電磁波(赤外線)を吸収します。 しかしN2, O2, Arでは振動双極子モーメントできないので透明というわけです。もし空気中にCOやNOがあれば赤外吸収で検知できます。 |
<CO2の赤外吸収>
CO2は双極子モーメントを持たない(Oδ--Cδ+-Oδ-で電荷が打ち消し合っている)ので不思議ですが、振動することで双極子モーメントが出現すれば赤外線を吸収します。それが図の2本の吸収線です(下にアニメーションがあります)。 実は赤外線で見えない固有振動があって、C=O距離が同じ向きに同時に伸び縮みする対称伸縮振動がそれです。 <H2O の赤外吸収> Hδ+-Oδ--Hδ- は真ん中で折れ曲がっているので、どのような振動をしても赤外線を吸収します。図では2本しか見えませんが、3800 cm-1付近で対称伸縮振動と逆対称伸縮振動が重なっているからです。 |
<Wolfram code>
ここでは原子の動きをマンガ的に表現します。 次のコードは CO2 の非対称伸縮振動を描きます。 次のコードはそれをアニメーションで表現します。 次はH2O の逆対称伸縮振動です。 |